2015年新春賀詞交歓会 会長挨拶

                 公益社団法人日本通信教育振興協会会長 浅井三郎 

あけましておめでとうございます。
新年にあたりましてひとことご挨拶申し上げます。

年明け早々、今年はあまり明るい話がありません。去年の場合ですと、アベノミクスという政策に、若干の期待がありました。もしかしたら景気が良くなるのではないかと。しかし実際には4月に消費税アップが実施され、最近の新聞によりますと、それによって1兆円分の個人消費が落ちたそうです。7月には個人情報の漏えい事件がありました。ベネッセショックといえるほどのもので、通信教育にはかなり響きました。消費税増税の影響で景気はずっと冷えたままです。最近の状況では、今年の正月の受講生募集状況は去年に比較し良くはありません。悪い状態が続いています。今年は、再任された安倍内閣がもう少し力強く施策を進めていくのではないかとは思いますが、第3の矢の、つまり規制緩和や新しい産業を興すということが今後うまくいくかどうかはわかりません。うまくいったとしても、それが通信教育にどのように跳ね返ってくるかはわかりません。たとえば特例的な規制緩和を認める「地方創生 特区」でICTを使った遠隔医療や遠隔教育などを特区の中で実現させるということですが、それによって通信教育業界が良くなるというイメージがどうしても浮かばない。今年は先を予見できない年のようです。これが私の結論です。

さて、通信教育の将来について最近感じたことを申し上げます。民間通信教育事業のビジネスとしてのパラダイムが少し変化しているのではないか。今はネット社会です。ネット社会というのは評判によって、たとえば国の権力がつぶれてしまう「アラブの春」のような状況から、お店の評判がわかるグルメ情報に至るまで大変な影響力があります。通信教育を運営するにしてもネット上の評判を気にする必要があります。昭和30年、40年代は、新聞に広告を出して、大量に受講生を募集することができましたが、今では全く状況が違います。事業としては非常に難しい状態となっています。ではどうしたらいいのか。通信教育というサービス商品はどうあるべきかということを考えなければならないのではないでしょうか。

肝心なことは、受講生の「満足」ということかと思います。通信教育を受講・修了して、ある程度の目的まで到達したという達成感や喜びを感じてもらう、そしてそれが受講料に見合うかどうかということが重要かと考えます。満足が得られれば受講生はリピーターにもなってくれる可能性が大です。大量広告、大量募集という形でなくとも、しっかり教育をして、満足をしてもらい、達成感を味わってもらい、学習の成果が社会に認められ、結果として社会で活躍ができるというサイクルを実現することができれば、また新しい受講生、新しい講座も生まれてくるのではないでしょうか。講座も関連のあるものが望ましいでしょう。このことは海外旅行という商品にも似ています。満足して初めてリピーターになっていく点です。通信教育の受講が次のステップとして学習成果を社会に還元できる、そのようなサイクルを回していくということを考えて、私たちは仕事をしていかなければならない。通信教育は役務の通販だという考え方もありますが、「人づくり」というところに力点を置かないとこれからの通信教育はうまくいかないのではないかと思っております。

最近はハウツウ物の書籍や百科事典を見かけることはないですね。ネット上で検索すれば大概のことは解ります。このような時代ですので付加価値を付けていかなければ通信教育は成り立たない状況かと思います。しっかり教育をして、満足していただいて、社会還元を果たしていただくことが肝心だと思います。

またこれは「人づくり」という非常に公益的な事業ですので、当然消費税10%という時には、軽減税率を適用されて当然だと私は思います。新聞社や出版社はすでに軽減税率適用の要望書を提出するなど動かれているようですが、通信教育の業界としても、我々が声を挙げなければいけないと考えています。

通教振も大変な年になりそうですが、これを乗り切るためにも皆様のご協力、ご支援をぜひともよろしくお願いいたします。  
正月早々、不景気な話をして申し訳ございませんが、本年もなにとぞよろしくお願いいたします。

 

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